動作分析から評価・治療を展開する②
動作観察 ≠ 動作分析
さあ患者さんの歩行を動作分析をしよう!
「初期接地で足関節底屈位,膝関節伸展位で爪先から接地し,荷重応答期では膝関節が過伸展して,・・・・・」
こんな感じの動作分析になっていませんか?
学生の頃も私もそうだったんですがこれは動作観察です.
上の図のように「背中が曲がってるな」,「ふらふらしているな」,「つまずいてるな」というのも動作観察で,こういうのは素人でもできますよね.
動作観察は目で見てわかる情報なんです.
動作分析は動作観察からもう一歩踏み込んで,
「背中が曲がっている」原因は何だろう?
「ふらふらしている」原因は何だろう?
「つまずいている」原因は何だろう?
このように,動作分析は動作観察の情報から「なぜこの動作になっているのか?」を考えて検査することということができます.
動作分析のポイント
次に動作分析のポイントについてお話していきます.
動作分析とは動作観察の結果から機能障害を明確にする過程です.
動作分析を行う際のポイントは
① 正常動作のバイオメカニクスを理解する
② ①の知識から仮説を挙げる
③ ②で挙げた仮説の検証
この3つです.
① 正常動作のバイオメカニクスを理解する
動作観察の結果だけでは,何が原因でそのような動作になっているかを理解することはできません.
そのためには正常動作のバイオメカニクスの理解が必須です.
寝返り・起き上がり・起立・着座・歩行の基本動作
食事・更衣・トイレ・入浴・階段などの日常生活動作
それぞれ動作にはバリエーションがあって,健常者であっても動作様式が違っています.
それでも正常動作の基本の「キ」を押さえておかないと,
なぜこの動作ができないのか?
この人はなぜこの動作様式を用いているのか?
を考えることができません.
以下に私が使っている書籍を提示しますので,気になる方は参考にしてみてください.
② ①の知識から仮説を挙げる
①の正常動作のバイオメカニクスを基に,動作観察の情報から「なぜこの動作になっているのか?」
について,機能レベルの問題点の仮説を挙げていきます.
例えば,歩行中の膝折れについて機能レベルの仮説を挙げていくと
初期接地で膝関節が伸展していない
大腿四頭筋の筋力低下
大殿筋の筋力低下
ヒラメ筋の筋力低下
立脚中期での足関節の過度な背屈,・・・
などなど,いくつかありますよね.
このように仮説を出来るだけ多く挙げられることがセラピストに必要なスキルになります.
③ ②で挙げた仮説の検証
②で挙げた仮説の検証をするために検査をします.
答え合わせの作業ですね.
ここで関節可動域,徒手筋力検査,感覚検査,バランス検査,・・・など種々の検査が登場します.
よく「患者さんの評価する」と言って上記のことをする人がいますが,それは検査です.
先程の歩行中の膝折れを例に挙げると,
初期接地で膝関節が伸展していない → 膝関節の関節可動域検査
大殿筋の筋力低下 → 股関節伸展筋のMMT
ヒラメ筋の筋力低下 → 足関節底屈筋のMMT
みたいな感じですね.
検査をしてみて
股関節伸展筋の筋力低下と膝関節の伸展可動域制限があった場合,これが歩行中の膝折れの原因なのではないかと評価します.
動作分析を治療に展開する
以上のような動作分析を実施した上で,機能レベルの問題点に対して治療介入をしていきます.
先程の膝折れ歩行の例だと,
大殿筋の筋力低下と膝関節の伸展制限が原因として挙げられたためこの2つに対して治療介入していきます.
もちろん,筋力低下や関節可動域制限の原因についても分析して治療手段を選別していきます.
ここで手技や理論が役立つんじゃないかな,と思います.
逆を言うと,動作分析ができないと手技や理論の使いようがないということです.
加齢や疾患によっては治療介入が困難なケースもありますので,その場合は動作分析を歩行補助具や福祉用具の選定にいかすことも必要になります.
このように動作分析は治療のみならず,代償手段を考える上でも重要なスキルになります.
おわりに
患者さんの動作レベルを向上させるために,動作のバイオメカニクスを理解しておくことは必要不可欠です.
動作分析がのコツは,①正常動作のバイオメカニクスを理解し,
患者さんの動作観察から②仮説を挙げられるようになることです.
本文ではありませんでしたが,自分の動作分析した結果を同僚や先輩後輩とシェアすることも上達の近道だと思います.
リハビリテーションの治療内容を決定していく中で,これらのプロセスは非常に重要なスキルだと考えています.
興味のある方は,動作のバイオメカニクスについて一緒に勉強してみませんか?
皆様のご意見・ご感想お待ちしております.